推しがピアスを開けているのでは?という話を耳にした。
私はなぜか今までそんなこと気にしたこともなくて、きっと心のどこかでピアスなんか開けているわけがないと思い込んでいた。そう思い込んでしまうには十分な環境があった。
だからこそ気持ちがザワついて気になって気になって仕方がなくなってしまったのだと思う。
その日はMC中によく髪を耳にかけていた。
私はその度に好きだなぁなんて思いながら(実際はあ゙ーーーむりちょっと待ってしんどいむり好きって感じ)(たぶん言った)、推しをロックオンしていた。
そして左耳に光るものがキラリとライトを反射したとき、息を飲んでしまった。私の知らないドキッだった。
そのあとの特典会で深くは考えないまま、私は「ピアス開けてるの?」と聞いてしまった。
誰かに教えられるよりは自分で聞きたいという、少し邪な感情もあったと思う。
そして「開いてるよー」という答えに漏れた声は「え……っなんで……」だった。
今思えば「推しがピアスを開けているのでは?」という話を耳にしたときに、もっと自分の気持ちをはっきりさせておくべきだった。
私は推しがピアスを開けていたらどう思うのか?そこの是非を持っておくべきだった。
なのに推しがピアスを開けているという事実に対して「え……っなんで……」と言ってしまった、結局はそれが私のまっさらな気持ちだった。
私の動揺に推しは「えー?いいやーん」となぜかゆるい関西弁で返してくれた(かわいい)。
そう、別にいいのだ。本人の自由なのだ。ピアスも推しも悪くない。
じゃあ「え……っなんで……」と声が漏れてしまった私は?泣きそうになりながら友人に抱きついた私は?
そもそも「悪い」「悪くない」という問題でもないのだけれど。
私はこれから「え……っなんで……」の意味を考えていかなければいけない。
友人には「理想ってあるもんね」と慰められたが、私の推しに対する理想とは何だったろうか。
ピアスに偏見があるわけではない。私自身がピアスを開けていないのでそういう感覚があまり分からないというのもある。
それでも、やっぱり「え……っなんで……」は私の本心だった。
ピアスがあろうとなかろうと推しは推し。
ライブの度にダンスが上手くなっていて、顔も頭も良くて、本当に大好きな人。好きでしかいられない人。
だけどピアスを開けていると知った帰り道、私は無性に髪が切りたくなった。