何気ない一言の話

今回の活動休止の報を受けて思い出した言葉があります。その言葉をかけてくれたのは、そしてぶつけてくれたのは、男性アイドルファンの親友でした。

 

1年前のあの日、12時に発表されたあるメンバーの脱退にTLは地獄絵図でした。私も例に漏れず泣いたり怒ったりして、感情は不安定に揺らいでいました。ネットでもいろいろな媒体で取り沙汰されました。私たちの思いを置き去りにして。

そして休むわけにもいかず向かった部活で、その親友に言われたんです。「でも、推しじゃないんでしょ?」って。その一言は重く私の心にのしかかりました。推しじゃないんでしょ?という見えない圧に押し潰されそうになりながら十分に泣き叫ぶこともできず、そして私の悲しみは行き場を失いました。

親友なりに心配してくれたことなんて分かっています。気を遣わせてしまったことも分かっています。それでも、あの日の私にとってあんなに残酷な言葉はありませんでした。去っていった彼に気持ちを向ける権利を剥奪されたようでした。

何よりもしんどかったのは、親友も好きなグループからメンバーが脱退することを経験していたことです。その当時のことは分かりませんが、もしかしたら「でも、推しじゃないんでしょ?」は彼女自身を慰める言葉だったのかもしれません。そこまで考えが及んでもなお心のわだかまりが取れない私は、どこか可哀想な私を演じているにすぎないのでしょうか。

 

そしてそんな出来事があったあと、親友の好きなグループから推し以外のメンバーが脱退することが発表されました。私は正直ざまぁみろとも(でも、推しじゃないんでしょ?)とも思えませんでした。適切な言葉が見つからなくて、ただ「同じ悲しみなんて味わわせちゃいけないはずだったのに」「好きなだけ泣いていいんだよ」としか言えませんでした。

今でも脱退や活動休止と聞くたびに、誰にどんな言葉をかけるのが正しいのか、分かっていません。

 

それでも、無理に慰める言葉を探すより、涙を流す誰かをそっと抱きしめる人になりたいと思います。きっと、少しは痛みが分かる側の人だから。